PROFILE
鍛冶師 戸梶通国
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なんちゃあ無駄なことはない。
この道に辿り着くまでの僕の寄り道も、
僕の包丁のなかにちゃんと生きちゅうがよ。
家のなかにいる包丁から、野山にてくてく歩いていくアウトドア志向の包丁へ。通国さんが作る葛巻ナイフは山の猟をイメージして創作した行動的な包丁だ。「サバイバルナイフはステンレスやけんど、この包丁は研げるきね。猟する人は簡単な砥石を持っちょって、山の中で研ぐがよ」。自分で料理もするという通 国さんは、切れ味や使い勝手の良さもデザインしながら包丁を打っていくのだそうだ。
地元の高校を卒業後、上京し、小さなデザイン会社に入社。1年で退職し、ファッションの専門学校に入学したものの、これも一年で辞め、今度は絵描きになろうと高知に帰って来たという変わり種でもある。22才の時に、今まで興味がなかった家業の鍛冶屋に興味を持ち、この道に入り15年近くになった。持論は「しよい、しぃよい。何とかなる」で、土佐弁でいう『簡単簡単』という意味。一週間で研ぎから包丁ができるまでを父親に習い、あとは試行錯誤の繰り返し。今では槌の音で刃物の温度も判るようになった。
「鉄を打って、一から最後まで自分でデザインできるのは、この刃物の世界だけやきね。まだまだ自分で可能性みたいなものを伸ばせると思うし、楽しみながらやりゆう。自分で作りたいと思うものをカタチにしようというのが、今の自分のテーマ」という通国さんが打つ槌の音は迷いのない音がする。少しずつ、自分指名での注文も増えてきたそうだ。
「ここへ辿り着くまで転々と寄り道もしたけんど、なんちゃあ無駄やなかったと思う。包丁のなかにちゃんと生きちゅう。まだまだ、いろいろやってみたいし、やりたいことをやったらえい。伝統に縛られると自分がしんどくなるので、伝統は意識せん」。
ハンマーの高さも炉の高さも、横座ではなく自分に合わせて立ってやる。等身大の包丁づくりは続く。
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