PROFILE
鍛冶師 小松 広
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鍛冶屋になるのが子どもの頃からの夢だった。
思った以上に
モノを作る楽しさがあって面白い。
家の隣りが鍛冶屋さんだった。子ども心にその仕事がとても面白そうに見え、将来、鍛冶屋になるのが夢になった。中学卒業を待ち兼ねて、十六歳で土佐鍛冶の第一人者である上村芳夫さんに弟子入りした。それから二十六年、小松広さんは実に楽しそうに仕事をしている。
「1本の鉄の棒から、だんだんと工程を重ねて刃物になっていくのですから、鍛冶屋の仕事は思った以上にモノを作る楽しさがあって面白い。けんど、腕はまだまだ。自分が気に入る刃物は打てん。鍛冶屋の仕事は一生が勉強だと親方に習いました」
小松さんの専門は鉈、ナイフ。ほとんどがオーダーで、要望に応じて1本1本手づくりで作るイノシシ用の狩猟鉈は県内外に多くの固定客を持つ。全国のナイフのマニア、コレクターからは型紙を書いた注文書が届く。「皆さん、それぞれにこだわりがあってミリ単位の仕事を要求してくる」のだという。にこやかで穏やかに見えるが、本人いわく、なかなかの頑固者。注文以上のモノに仕上げようと、細部にまでこだわる。
「僕は仕上げまで一切外には出しません。一から十まで全部、自分でやる。それがこだわりです。これからも、それなりに良い刃物を一つ一つ、コトコトと作っていきたい」と小松さん。刃物が打ち上がれば、そのかたちに応じたつばを作り、柄やさやを作り、そこに刃物を納めて完成する。
その小松さんがめざす「よい刃物」とは、手にしっくりとなじむ刃物。自分で作った刃物は自分で試し、改良を重ねていく。「僕は釣りをするので血抜き用にステンレスの刃物を作る。それをイノシシ用にすると、脂がまわらず使いやすいと注文をもらうこともある。ナイフの世界は面白い」。
親方とともに新しい場所に仕事場を移転。龍河洞のそば、緑に囲まれた抜群の環境だ。「師匠が隣の棟にいると思うと安心する」。楽しんで作る人の刃物はやっぱり、楽しい。
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