PROFILE
鍛冶師 西岡信昭
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自分の包丁は暮らしのなかから
絶対に無くならんと思うちゅうき、
続けていける。守っていける。
カンカンカンカン。横座のなかでベルトハンマーを相棒に、西岡さんは鉄を打ち、鉄より固い鋼をサンドイッチ状に割り込ませていく。鉄が刃物となる一番最初の段階であり、これが土佐打刃物の特徴でもある。
「土佐打刃物の場合は、鍛冶屋によって包丁なら包丁1本、鎌1本というふうに専業化されちょって、うちでは親父の代から黒包丁を作っています」と西岡さん。父と弟と三人で営む工場では十数工程にのぼる作業も分業化されているのだそうだ。
西岡さんが父親に弟子入りしたのは20才の時のことで、以来二十七年が経った。「子どもの頃から工場が遊び場で、横座に隠れてかくれんぼをした。ハンマーの音、鉄の焼けるにおいが生活のなかにあったきね。家業を継ぐのはあたりまえのことで、何の迷いも抵抗もなかった。ハンマーがうるさいなかでも居眠りできますきね」という。
その職人の世界は、まさに「見て盗め」で、手とり足とりなどもってのほか。「だから、初めの頃は全然仕事の面白さが判らんかった。20数年経って技術も身に付いてきて、最近ようやく面白味が出て来たという感じですね。それまでは苦しみやった(笑)。僕の場合は親父が師匠ですけど、その師匠が求めるものに対して、自分の腕がそこまで到達できてないというジレンマがあった」。
師匠たる父は、まさに絵に描いたようないごっそう。当然、今もって誉められたことは一度もないそうだ。「今、刃物は家庭のなかで道具としての価値を無くしつつあるけんど、自分の包丁は絶対に無くならんと思うちゅうので続けていけるし、さほど先行きにも不安は持っていない。
この伝統という基本路線はずっと守って行きたい」と言う。それぞれに職人の生き方があり、みんな違って、それでいい。
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