PROFILE
鍛冶師 山﨑洋介
-
-
打つ時は鎌のことしか考えやせん。
そんな時は、
ええ品物が出来よるがやろうと思う。
朝七時半、炉に火を入れ、山崎さんの一日が始まる。真っ赤に焼けた鉄をいざ打ち始めると、あっという間に鎌の刃のカタチなっていく。その間、およそ1分足らず。「鉄は熱きうちに打て」の言葉のごとく、鉄はその瞬間を逃せば叩けなくなる。「毎日、型通りにびしっと決めてやろうと思いながら打っている。これが二十六年経っても難しい。うまくなりたいと思ってやっているけど、なかなかうまくならん」と山崎さん。若きzakuriを率いる土佐刃物流通センターの理事長でもある。
山崎さんは鍛冶屋の三代目。高校卒業後、県外の専門学校に進み、一旦、県内のとある会社に就職したが、家を継ごうと二十四歳の時に父に弟子入りをした。「この仕事は目で見たり、口で言われただけでは解らん。
体全体で覚えんといかんことも多いので、おやじが横座に一緒に入って、私の体を後ろから支えて教えてくれた」。山崎さんは、その記念すべき第一号の鎌を今も工場の柱に掛けている。未熟な鎌に自分の初心があるからだ。「この仕事を嫌だと思うたことは一回もない。自分に向いちゅうと思う。打つ時は、鎌のことばあしか考えやせん。これをこうやる、こうやると順に工程を追いながら、ただ一心に打ち込むだけ。悩みも苦労も打ち込んでいる内に忘れるねえ。そういう時は、ええ品物が出来よるがやろうと思う」鎌には角型や土佐型などの種類があり、山崎さんの場合は土佐型の注文が多い。カマのなかでもこの土佐型が一番難しいと言われる。
「土佐型は腰となかごの丸み、刃の幅のバランスが難しい。毎日毎日、この難題に挑みよらあ。」師匠である父は十年前に引退。未だに息子の腕を誉めてくれたことは一度もない。「見ても“これは鎌じゃないが”と言うだけで、“ええねえ”と誉めることは絶対にない」と言う。
そのお目付役の父に問うと「息子はまだまだ、ひよこみたいなもんよ」と言って笑った。
ZAKURI商品ラインナップ
ページトップへ